2008年09月19日

ベーシックインカム

先日、地方紙にベーシックインカム(BI)の話が出ていました。ワーキングプアなどの望まない労働に追い込まれないために、全国民に労働も何も関係なく一定のお金を給付するというもののようです。
記事に出ていた大学の先生は、生活保護の基準を基に考えて全国民に8万円を給付するという考えを提唱していました。現在の国民総所得(GDP)の42%を充てればそれが可能だ、と。医療保険などはこれとは別に考えるようです。

<以下、記憶を元に書いておりますので、ちょっと曖昧です>
新聞記者の方は「収入の4割も税金に持っていかれて、みんな働きますか?」という趣旨の質問していましたが、BIでの生活よりも良い暮らしをしたい人は居るので、そういう人は働きますよ、と。
最後に、BIの考え方が定着するのに20年はかかるでしょうね、と。
<以上が記事の内容でした>


この記事を読んで反射的に思ったのは、「一人8万円が給付された上に税率が収入の4割という社会は、数年で破綻するな」と。
たとえば、我が家では4人家族で32万円のBIが何もしなくても入ります。ボーナスを抜いて考えれば、我が家の現在の月収よりも多いです。この先労働を行っても、労働の対価の半分くらいもって行かれる。だとしたら、まったく働かないか、せいぜいちょっとだけ働いて終わるでしょう。そもそも、望まない労働を強制されないためのBIなのですから、経済の規模は確実に縮小します。たとえば、経済の規模が半分になったとしましょう。すると、最初はBIのコストがGDPの42%だったのが、半分になったとたんに8割になります。そうなると、「8割も税金に取られるくらいなら、働かない」という人が、税率アップ前よりもドンと増えるでしょう。結果、経済活動だけを見ると現在のGDP
の5%程度になってしまったとします。それでも、BIが42%分あるから、経済規模は現在の約半分は確保できますが、ただ単に紙幣を乱発して形式的にばら撒いているお金になります。典型的な経済破綻国家です。ジンバブエが今そんな感じですよね。円の価値を限りなく0にするもっとも簡単な方法です。
結果、立て直すためにクーデターか何かが起こって、強制労働が始まるでしょう。ないしは、教育によって、労働の対価がほぼ100%収奪されても労働を行う国民を育てる必要があります。
あぁ、なるほど、きっと20年かかるでしょうね(爆)。
こんな馬鹿なことを平気で新聞に載せてもらうレベルの人間が大学の教官になれるわけです。大学院の試験に合格できなかった自分は、これ以下のレベルだったんかいなぁ、って思います(まぁそうなのでしょうけどね)。


そして、その記事を見た日の夜、更に気づきました。
42%のBIの確保のためには、最初から税率は70%くらいは必要になる、と。
現在、国民負担率はアメリカについで低いわけですが、それでも4割弱。そのうちBIが導入されることで削ることができるのは、1)国民年金の負担 2)社会保険のうち国民年金と同額の部分 3)生活保護の一部(医療扶助や教育扶助は削れない) くらいだと思います。となると、削れるのはせいぜい10%ちょっと。現在の税金のうち30%くらいは残るのです。結果、70%以上の税率が最初から予定されます。
この状況で、「BIでの生活よりももっと良い生活をしたい人は働くはず」と言われて、「自分は働きます!」って手を上げて言える方、いらっしゃいますか?
posted by ベドウィン・ピエロ at 22:39| Comment(10) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
えーと、人間以外の労働力が人件費よりも効率的に働いてくれれば、その程度に応じたBIが成立します。ただし実際にはそれは直接的なBIとしては還元されず、社会基盤や福祉・教育への投資、と云う形をとるでしょう。……要するにこれは社会が豊かになる、とほぼ同じ意味ですが。

この記事の場合だと恐らく、労働者が全て機械化されてかつその維持コストがほぼゼロであれば、利益の差額を月額8万円のBIに還元できると思います。市民の勤労意欲がなくなっても問題なし。……機械が奴隷として全ての労働をこなす、まさに古代ギリシア的な理想社会ですね。あと20年でそんな世の中になるのだろうか。





Posted by QED at 2008年09月21日 23:41
>QEDさん。
コメント、ありがとうございます。
そっか〜、そういう視点もあるんだなぁ、って納得しかけたのですが、いや、でも待てよ、と。
仮に人間が全く働かない社会が来たとしても、生産による価値創造分が全部収奪されて国民に分配されてしまうとすると、だれが生産組織を運営するんでしょうか?
あと、すべての生産資本を国家に集中させたとして(この段階で既に「これは社会主義ではないんです」という教授氏の発想を全否定するわけですが)、最低限公務員が必要になると思うのですが、その確保はどうするんでしょうか?
まぁ、ものすごく価値を生み出せる非人間生産組織を、ごく少数の人間で管理する、というのが出来るなら、「論理上は可能」なんでしょうけど、そういうのは「不可能」って言うような気がするのですが…。
Posted by ベドウィン・ピエロ at 2008年09月22日 22:50
いや、だから現在の日本の産業能力は月額8万円/一人よりも高いですって。その差額で、月額8万円以上ほしい人を雇えば良いわけ。「勤労意欲がなくなっても問題なし」とは書いたけれど、厳密な言葉では無かったですね。申し訳ない。
単純に月額8万円=年額96万円なので、それ以上ほしい人はそこそこいると思いますよ。

「ものすごく価値を生み出せる非人間生産組織を、ごく少数の人間で管理する」ことは、まあSF的な発想でなら有り得ると思います。

或いは例に出した古代ギリシアでも、当時の言葉で厳密に「労働」というのは全て奴隷がしていました。政治や軍隊への参加は市民の権利または義務であり、労働ではなかったわけだし。

Posted by QED at 2008年09月23日 23:03
>QEDさん。
レス、ありがとうございます。
そうですね〜、結婚するまでは、男は働くかもしれませんね。
でも、結婚するか、シングルマザーを受け入れられるのであれば、とにかく子供を作り続けるのではないでしょうか?生活保護の場面でよく見かけるように。
教育費を高くする、という方法もありますが、子供さえ作り続ければ湯水のようにお金が沸いてくる制度があるのが分かっているなら、教育費にお金をかける意味が無くなりますよね(もちろん、自己実現の手段として教育を受けたい/受けさせたい場合は別ですが)。
古代ギリシアの件は勿論存じておりますが、古代ギリシアの場合は少なくとも「市民」は奴隷を使ってでも経済活動を行わないと家産(もっといえば自己の生命)を維持できませんでした。でも、BIが保証されている場合、経済活動を行わなくても生命は保証されます。また、古代ギリシアでは、経済活動の果実の95%を税金として課税されたりはしていないのだと思います。
僕が上記で問題にしたのは、
1−1)何もしなくても充分に文化的な生活が出来るだけの収入が保証されている上に経済活動の果実の7割以上が課税される世界で、それでも経済活動を続けるという人の努力によってGDPが縮小しないという世界はありえない
1−2)GDPが縮小を続ける為にあっと間に税率が100%「を超える」世界で、それでも誰かが「生活を良くするために」働くというのは考えがたい。あるのは、「収穫の全てが税金で持って行かれても、社会全体の富が増加することで巡り巡って自らも富むことが出来る」と皆が思想的に強力に信じている世界か、または権力によって強制的に労働に追い込まれている世界である
2)ロボットなり奴隷なりを使うにしても、生産資本を国有化して無理やり資本を稼動させなければ、税率100%オーバーの世界では生産資本は稼動しない

ん?
QEDさん、「BIの交付には現在のGDPの42%が必要」ってのと、「現在の国民負担率がGDPの4割弱」って部分を無視していませんか???
QEDさんのおっしゃるように、確かに、まずは日本の経済力が上がって「国民負担率が2割弱で成立し、かつBIでの給付率も2割弱くらいの社会」が出来上がれば、BIを無償給付しても問題ないんでしょうね。それなら僕も「この大学教授は馬鹿だ」とは言わないですよ。「20年でその社会になればいいんだ」という話なら分かりますが、そうなっても、その時はその時で各種福祉政策の受給者はやっぱり「社会の経済水準の上昇に伴って、給付水準を上げて欲しい」ってなって、結局は国民負担率は下がらなく、BIも8万円ではなく16万円って話になってきて…ってならないでしょうか?
ここで小さな政府にして福祉政策水準を上げずに、かつ、BIを8万円のままにするのって、ただ単に今まで社会的弱者に集中的に給付してきた福祉政策予算を削ってまんべんなくみんなにばら撒いているだけのような気がします。
Posted by ベドウィン・ピエロ at 2008年09月24日 21:13
いや、長文の返信申し訳ない。現実的な話をすると、当該記事でのBI8万円は不可能だと自分も思います。それは同意。というよりも、この日記を読んだ初めからそれは念頭にあったです。

でも、それを自分はまだ書いて無かったですね。余計な手間取らせました。すみません、本当に。

自分が興味あるのは、現在そのBIが成立するかどうかよりも(無理なのは当然ですから)、どのような条件でならそのBIが可能になるか、という方でした。
問題から逃げるように、可能性のありそうな方向に誘導しようとする話し方になってたのもそのせいですね。重ね重ね申し訳ない。


ところで、
「とにかく子供を作り続けるのではないでしょうか」
これはBIが成人だけに給付されれば良いと思います。未成年には義務教育などの費用がかかるので、たとえば公立学校の費用の完全免除などの形をとればそれでよいかと。



それはそうと、今気づいたこと。
「ワーキングプアなどの望まない労働に追い込まれないために」というのが、単純に「給料が少ない仕事」を指してると解釈すると。
それだったらBIではなく、薄給の職業の人への給付で良いのではないだろうか。児童扶養手当みたいに。
働いているのに年収が一定以下の人に対しての給付金としてのBIのような制度。もちろん、より多く労働収入を得ている人との間に逆転現象がおきないことも大事です。
Posted by QED at 2008年09月25日 19:33
追記

BI通貨は円ではなく、自治体が発行する地域の商品券のようなもの、というのはどうですか?

酒・タバコが買えない、金融機関に預け入れができない、地域外では使えない、などの制限を設ける。勤労所得(円)と差別化するのは意味があるかと思います。
Posted by QED at 2008年09月26日 10:50
>QEDさん。
ごめんなさい、すっかりお返事遅くなりました。
追記の制度は、10年位前にあった地域振興券を思い出しますね。現在の生活保護制度も、チケット制にしていいんじゃないかなぁ、って思います。家計について自分でやりくりする能力がある人は現行制度でいいと思うのですが、保護費が支給されるとすぐに使い込んでしまう人や酒・タバコに使ってしまう人も相当数いるわけで、そういう人たちにとってはチケットでの支給にしてあげるほうが却って本人の為になると思うのです。

長くなったので、一旦切ります。
Posted by ベドウィン・ピエロ at 2008年10月01日 09:39
「長くなったので」ということで一旦切りましたが、どちらかというと「話の内容が変わるので」というところかですね。

QEDさんのおっしゃるとおり、「そんなの出来ないだろう」よりも「代わりに何が出来るか?」を考えたほうが生産的ですよね。

ただ、9月23日の提案の方は、結局働かなかったら同じ収入がもらえてしまうから意味が無いですね。BIというよりも、生活保護制度が無条件に適用されるイメージになってしまうのかな、と。いかがでしょうか?
あと、非人道的な労働に陥らないですむためには、やっぱりそれなりの収入が必要だと思うのですね。結局、全員が基本的には(高齢者や障害者などの年金生活者や専業主婦を除いて)労働しないといけない状況に追い込まれないと国の経済は縮小を免れないのではないかな、と思います。となると、全国民が保障される収入ってのは、結局は生活するには足りない収入になってしまうのではないかな、と。いかがでしょうか?

ただ、現行の各制度の収入について給付方法について考えていくのはいいことだと思います。(僕も、国民の教育レベルを上げて国際競争力を高めるのと本を作る側の人たち(作者や出版社)を保護するために、漫画や雑誌に使えない図書券で一定割合を交付したらどうか、とか考えたことありますよ。日本中から広い支持を受けられるとは思っていないですが。)
Posted by ベドウィン・ピエロ at 2008年10月01日 09:52
9/23のコメントの件、了承です。かなり思いつき名書き込みでしたね、申し訳ない。
Posted by QED at 2008年10月05日 16:30
>QEDさん
いや、こちらこそ、「なんとか意味ある記事にならないか?」って思考実験していただいていたのに、水を差してしまって申し訳ないです。
Posted by ベドウィン・ピエロ at 2008年10月08日 23:10
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